2016-03-19
3月17日はリオ五輪マラソン代表発表の日で、いつもならトップニュースになっていたが、この日は事件・事故が重なり、あまり大きく取り上げられることがなかった。
発表前から結果が分かっていて、意外性がなかったこともある。
でも、翌日の昼間のワイドショーでは、かなり長い時間を割いてやっていた局もあって、それを見ていたら「有森さん、突っ込むところがちょっと違うんだよな〜」と思ったので、すでに日記には載せたのだが、こちらにも再掲しておく。
陸連を困らせた「永山問題」とは
女子マラソンは大阪国際でぶっちぎり優勝した福士加代子選手が所属するワコールの永山忠幸監督が、「内定が出ないなら万が一選ばれなくなることもありえるから名古屋にも出る」と言いだして、それを陸連が「やめてくれ」と頼んで……という騒動が起きた。
世界陸上の「日本人トップで8位以内」は即内定だが、それ以外の選考レースはすべて終わってから判断する、という選考基準が発表されているのだから、永山監督の「なぜ内定を出せないのか」というのは言いがかりにすぎず、黙って名古屋が終わるまで待つべきだ……というのが、多くの人たちの「常識的な意見」だった。
選考基準の内容は永山監督も十分分かっているはずなのに、なぜ「内定が出ないなら駄目押しで名古屋にも出す」などといいだしたのか?
ひとつには、昨年の世界陸上女子マラソン代表選考をめぐる理不尽さがある。
世界陸上選考レースに指定されたレースの中で唯一の優勝者である田中智美選手が落とされ、最後の競り合いに負け、トップに4分30秒の大差をつけられて3位になった重友梨佐選手が選ばれた。重友選手の30km以降の5kmラップは、17分58秒、18分19秒、ラスト2.195kmは8分8秒かかっている。
それなのに、「20kmすぎまでハイペースのトップ集団についていたのは積極的なレース運びだった」などと無茶苦茶な理由で評価され、一方で、ペース配分を間違えずに、最後はアフリカ選手とのデッドヒートを力でねじ伏せて優勝した田中選手を落とした。これは誰が見てもおかしな選考だった。
世陸マラソン「メダル」から「8位以内」に基準引き下げは「後出しジャンケン」だ
さらに決定的に問題なのは、従来、五輪前年の世界陸上が代表選考の一つになる場合、「日本人最上位でメダル」が条件だったが、急に「8位入賞」にまで一気にハードルを下げたことだ。しかも、それは世陸の代表選手が決定した後に発表された。
世陸のマラソンで8位入賞で日本人最上位なら即五輪代表に内定という基準を陸連が発表したのは2015年7月2日。その世界陸上の代表が決まったのが2015年3月11日なので、世界陸上の代表が決まった後に従来の「メダル」から「8位以内」に基準を下げたわけだ。すでに世陸代表に選ばれた3人ずつの選手に異常な優遇をしたことになる。これでは「後出しジャンケン」である。許されることではないだろう。
その3人ずつとは、
前田彩里(ノーリツ)、伊藤舞(大塚製薬)、重友梨佐(天満屋)
今井正人(トヨタ自動車九州)、藤原正和(ホンダ)、前田和浩(九電工)
だ。
新星・前田彩里(彼女の選考には文句のつけようがなかった)のノーリツはともかくとして、他はみな駅伝の常連企業。特に男子は駅伝色が強い。
陸連内部でなんらかの人脈談合、政治力が働いて、甘すぎる「8位以内なら即内定」という基準に変えたのではないかと勘ぐってしまう。
そうではないというなら、男子については、もう長いこと世界のトップクラスとは大きく差がつけられているので「メダル」なんて可能性がないからせめて8位以内を……ということになって、それに引っ張られる形で女子も「メダル」から「8位以内」に引き下げたのかもしれない。
しかし、そうだとしたら、その時点で陸連は世界へ敗北宣言したも同然だ。
その結果、世界陸上女子マラソンはどうなったか?
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