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「フクシマ」は福島の問題ではない。
地球規模の問題、人類がこれからどう生き延びていくかというような大きな問題なのだが、この事態を引き起こした要因を考えていくと、昔からよく言われる「親方日の丸体質」の問題に触れないわけにはいかない。
宮脇昭氏が
「震災がれきを活用して東北に『森の防波堤』を」と提唱している。
(日本経済新聞WEB版 2012/2/1)
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しかし、この提案が、国にはまったく無視されている。
その裏事情をリポートしているのが、
「中央省庁の壁は、防潮堤よりも厚かった──相沢光哉・宮城県議会議員も憤る「森の防潮堤」が実現しないワケ」(2012年12月05日 磯山 友幸 経済ニュースの裏側 現代ビジネス)。
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かいつまんで説明すると……、
■宮脇氏の提言:
- 震災で生じたがれきのほとんどは、家屋などに使われていた廃木材やコンクリート。これらはもともと「自然素材」であり、土に還る。捨てたり焼いたりしないで有効に活用すべき。
- 海岸部に穴を掘り、がれきと土を混ぜ、かまぼこ状の土塁を築く。そこに、その土地の本来の樹種である潜在自然植生の木を選んで苗を植えていけば、10〜20年で防災・環境保全林が海岸に沿って生まれる。
- 東北地方の潜在自然植生であるタブノキやカシ、シイ類などは根が真っすぐに深く地下に入る直根性・深根性の木なので、容易には倒れず波砕効果を持つ。背後の市街地の被害を和らげ、引き波に対してはフェンスとなり、海に流される人命を救う。
■相沢光哉・宮城県議会議員の憤懣:
- 宮脇氏の提言を知り、議会で自民党から共産党までの全議員が全会一致でこの「緑の防波堤」案を採用しようと決めた。
- ところがこれに国がストップをかけた。
- 廃棄物処理法で、木質類は埋めてはいけないと決められているから「そもそもガレキを埋めるという行為自体がダメ」だと言う。
- 国はあくまでもコンクリートと鉄で作る巨大堤防の建設を進めようとしている。
- 防潮堤のほとんどは国土交通省の所管。民主党政権で「コンクリートから人」へということで仕事が干上がっていたのが、震災で膨大な予算が付き、目の色が変わった。海岸堤防は国交省のやりたいように進められている。
- 東日本大震災の大津波では、高さ10メートル以上の大堤防が引き波によってことごとく倒された。
- それにも懲りず、平野部では高さ7.2メートル、気仙沼などのリアス式海岸の場所では11.4メートルのコンクリート製の堤防を、引き波でも倒されないようにがっちり作り直すと言うが、高さ7.2メートルの堤防をそのレベルで作れば底辺の厚みは40メートルにもなる。そんなものを太平洋沿岸にズラッと築けば、陸側からは海が見えなくなるし、海側からも陸が見えなくなる。
- そんな異常なものの建設が、現実に国の直轄事業で始まっている。
片寄った主張ととるかたもいるかもしれないので、「緑の防潮堤懐疑論」も紹介しておく。
宮脇氏の唱える「緑の防潮堤」に疑問を投げかける人たちの主張をまとめると……、
- 有機物は埋めればいずれ腐る。その際にガスが発生したり、土地が陥没する。
- 土木工学的に強度の裏付けがあるのか?
- 木質瓦礫を含む堰堤を津波が越えれば水が浸透して浮力が生じる。第2波3波に耐えられるのか?
- 余震で液状化しないか。
- 広葉樹は深くまっすぐに根を張ると言うが、塩分の多い土壌でもそうなるのか?
……といった意見が見られる。