「川内村のミミズ」記事で騒いでいる人たちへ
2012-02-06


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線量が高いところでは土壌も汚染されたというだけの話

農水省所轄の独立行政法人である森林総合研究所の長谷川元洋主任研究員(土壌動物学)が、昨年8月下旬〜9月下旬に川内村の国有林で採取した数十匹のミミズから1キロあたり約2万ベクレルの放射性セシウムが検出されたと報告したというニュースが大きく報じられている。
このニュースを受けて、「そんなとんでもない汚染の村で帰村宣言とは何事か」「村長は住民の命を何だと思っているのか」といったコメントがネット上に溢れている。
この問題についていくつか確認しておきたい。

調べたのは3か所だけ

 この調査の元サンプルになったミミズは、昨年8月〜9月に農水省が、川内村、大玉村、只見町の3か所で杉などの木を伐採して採取したときの副産物らしい。
 この調査は、杉などを伐採して木の部位別(葉、枝、樹皮、辺材、心材)および林内の落ち葉などの堆積物、土壌の放射性セシウム濃度を調べることが目的とされている⇒中間報告書はこちら
 調査地点は3か所だけで、この3か所の中では川内村が第一原発に一番近い(一部は20km圏内の警戒区域)。
 そのときの空間放射線量は、川内村の調査地点で3.11μSv/h、大玉村が0.33μSv/h、只見町が0.12μSv/hだったという。
 ちなみにニュースでは調査したのは昨年8月下旬から9月下旬となっていたが、この報告書には8月8日〜12日の5日間と書かれている。後からミミズなどを追加で採取したのかもしれないが、空間線量を計測したのはおそらくこの8月8日〜12日だろう。

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空間線量が高いところほど土壌汚染もひどいというだけのデータ

 さて、昨年8月時点で空間線量が3μSv/hを超える場所といったら、川内村の20km圏外では極めて限られていた。思い当たるのは、大津辺山の一部あたりか。川内村といわき市との境界あたりにはホットスポットがあり、荻や志田名という地名はNHKの番組でも報じられたので有名になった。そこにある民家は川内村よりもいわき市のほうが多い。ちなみに、川内村でそのホットスポットにあった1軒は「特定避難勧奨地点」に指定された。
 具体的には下川内三ツ石 勝追という場所で、7月の時点で空間線量が3.2μSv/hを超えていたという。該当の家はすでに新潟県に避難していた。
 こうしたホットスポットは存在していたので、おそらくそのそばの国有林か、あるいは20km圏警戒区域内の国有林だろう。
 ちなみに我が家は家の両側が国有林だが、昨年8月の時点で林の中の空間線量は1μSv/h以下、家の外で0.5μSv/h程度だった。
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 で、森林総合研究所のミミズ調査の件だが、これは「空間線量が高い場所は土壌もそれだけ汚染されている」というデータにすぎない。サンプルは3か所だけ。空間線量が0.12μSv/hや0.33μSv/hの土地より、その10倍、30倍の線量がある土地はもっと汚染されていますよ、ということが証明されただけで、あたりまえすぎる話。
 要するに、空間線量が3μSv/h程度ある森林の土壌に棲むミミズは2万ベクレル/kgくらいのセシウムを含んでいる可能性がありますよ、ということになる。
 ミミズ1kgというのはあんまり想像したくない図だが、仮に体重が10gのミミズであれば、1匹あたり20ベクレル程度のセシウムを含んでいますよ、ということだ。

川内村の広さと位置関係を把握していますか?

 たった3か所のサンプル採取地の1つがたまたま川内村のホットスポットだったことで、ニュースを読んだ人たちの多くは「川内村ってとんでもなく汚染された村なのだな」と思いこむ。
 これはまったく違う。
 川内村の面積は千代田区の17倍ある。

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