放射性物質を含んだ土の「中間」貯蔵などありえない
2011-09-09


「中間貯蔵施設」という欺瞞


「除染」という言葉が飛び交っているが、最初に断っておきたい。
 放射能は、焼して消滅させるとか、薬をかけて中和させるということは一切できない。 
 放射能を消す科学技術は存在しない。
 できるのは「拡散」か「移動」だけ。あとはひたすら時間が経って放射能が減るのを待つしかない。
「拡散」というのは、一か所に高濃度で溜まっていると危険だから、広く薄く拡散させたほうがまだ危険性が減るという考え方。「移動」は、危ないものが町の真ん中や公共施設付近にあるよりは、どこか人の近づかないような辺鄙な場所に移動させたほうが安全だ、という考え方。

 細野原発担当相が、「福島県内に核汚染物質中間貯蔵施設を建設することをお願いすることはやむをえないが、最終処分場は福島県外に」云々ということを発言したことで、佐藤雄平福島県知事が態度を硬化させたと報じられている。
 ここに出てくる「汚染物質」とは、主に「放射性物質を含んだ土壌」をさしていると思われる。警戒区域などで倒壊した家屋の瓦礫なども含まれるだろう。
 こうしたゴミは、本来原発から出てくる高濃度放射性廃棄物(現実には「廃棄」できないので単に「廃物」と呼ぶべきだという話もあるが……)のように、キャスクに封印されていたりガラス固化処理されているわけではない。ほとんどはダンプカーの荷台に積まれてどど〜っと降ろされる類のものだ。そうしたゴミに「中間」とか「永久」という、高濃度核廃棄物処分(これも正確には「処分」できないが)と同じような言葉を使っていることは欺瞞以外のなにものでもない。
 ここで言う「中間処理施設」とうのは、一般の産廃場とあまり変わらない。概念図を見ても、コンクリート壁やシート、ベントナイト(水を吸収する粘土状の物質。ネコのトイレ砂などにも使われている)で放射性物質の浸み出しをある程度防ぐだけで、基本的には「埋めてしまえ」という発想のものだ。
 将来、ここからわざわざもう一度土や瓦礫を掘り起こして他の場所に移動させるなどということはありえない。もしやったとすれば、移動先で同じことを繰り返すだけだ。
 そもそも放射性物質は時間と共に放射能が低下していくのだから、早い時期の貯蔵場所のほうが危険性が高い。「中間」だからまあいいでしょ、という話ではない。
 
 一方で、学校などの公共施設で、いわゆる「除染」作業を徹底的にやることは必要だし、すみやかにやらなければならない。出たゴミを運び出さなければどうしようもないのだから、それをひっそり溜め込む場所が必要になることは自明のことだ。
 その場所を福島県内に作ることは、移動距離や費用から考えて、あるいは、「すでに汚染されてしまっている土地は有効利用が極めて限られているのだから、そういう場所に運ぶのがいちばんいい」という理由から当然と言えば当然だろう。そこに感情論を持ち込んでも解決できない。
 
 それを認めた上で、次のことは言っておきたい。

1)除染作業は、「効果」を最大限に発揮できる方法、範囲で行うべき
2)これを原発に代わる新たな利権ビジネスにしてはいけない

 これが守られないと、日本の国土は今よりひどいダメージを受けかねない。経済力もしかり。
 
 例えば、空間線量が1μSv/hに満たないような森林を軒並み「除染」名目で伐採してしまうのは、効果の点からいってバカげている。
 ところが、もともと原発にぶら下がってきた浜通り地域を中心に、福島県内ではすでに、仕事になればなんでも受け入れたいというムードが強まっている。
 はいやりましょう、と、地元は諸手を挙げて引き受ける。下請け・孫請け・三次受け・四次受け……という、原発作業員の「人夫出し」と同じ構造が復活して、本来の「除染」という目的とは違う「雇用が作り出せればそれでいい」という理由で進められる。

続きを読む

[原発]
[無能な政治家]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット