禺画像]
1か月前くらいからは、さすがに誰もが「今から中止はもうないんだろうな」と思っていただろうが、本当に東京五輪が強行開催されてしまった。
しかも、開会式の音楽作曲担当者が辞任したり、息つく間もなく次から次へと問題噴出。トドメは、開会式前日に、開会式の演出総監督的立場にいた小林賢太郎が電撃解任されるというトンデモな事件まで起きた。
昨夜、開会式を見た。
以下、長い文になりそうなので、最初にひとつ結論的なことをいえば、
開会式に関しては、バッハと橋本聖子の中身の薄っぺらな長演説とIOCがねじ込んできたPR動画さえなければ、ほぼ満点といえる出来のものだった。
まさかこれほどのものを小林賢太郎の指揮の下に用意していたとは、想像できなかった。
以下、私がそうした気持ちになるまでのことを、なるべくていねいにまとめておきたい。(文中敬称略)
「言葉選び」を間違えた、はまさにその通り
まずは開会式前日に起きた、総合演出担当・小林賢太郎の電撃解任劇について触れないわけにはいかない。
ラーメンズのファンである私は、小林賢太郎の才能や作風については一通り知っている。人格や人生哲学まではよく知らないが、それでも「反ユダヤ主義者」とか「ナチのホロコーストを揶揄したコント」という報道はにわかに信じられなかった。
件のコントは20年以上前のもので、まだDVDもなく、VHSビデオテープで売られていたものの中に収録されていたという。
ネット上に出回っていたのですぐに確認した。
当時NHKの子供向け番組として有名だった『できるかな』の登場人物、ノッポさんとゴン太くんに分したラーメンズの二人が、番組のネタを考える企画会議風の会話をしている、という構成。
文字おこしすれば、こうだ。
片桐仁(ゴン太くん風):来週、何やるか決めちゃおうね。そういうことはちゃんとやんなきゃダメだから。何やる、何やる?
小林賢太郎(ノッポさん風):ああ、じゃあ、トダさんがさ……ほらプロデューサーの。「作って楽しいものもいいけど、遊んで学べるものもつくれ」って言っただろ?
片桐:ああ、ああ(頷く)。
小林:そこで考えたんだけど、野球やろうと思うんだ。今までだったらね、新聞紙を丸めたバット。ところが今回は、ここに「バット」っていう字を書くんだ。今までだったら、ただ丸めた紙の球。ここに「球」っていう字を書くの。そしてスタンドを埋め尽くす観衆。これは人の形に切った紙とかでいいと思うんだけど、ここに「人」って字を書くんだ。つまり文字で構成された野球場を作るっていうのはどうだろう?
片桐:ああ、いいんじゃない?
小林:ねえ!
片桐:じゃあ、ちょっとやってみようか。ちょうどこういう人の形に切った紙いっぱいあるから……
小林:あ、本当? ああ〜! あの「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」やろうって言ったときのな。
片桐:そーうそうそうそうそう! トダさん怒ってたなあ。
小林:「放送できるか!!」ってな。
コントはこの後も続いて、二人は実際に紙で作った小道具を使った「野球」を始める。つまり、このコントのテーマはホロコーストとは何の関係もない。
文字や言葉で世界を構築する、というような実験に、子供の心を持った二人が挑んでいくという構成の中で、何か笑いが生まれないかという実験的なコントだった。
コントの出来そのものは、他の小林作品に比べてよくないし、それこそ小林がアドリブ的に口にしてしまった「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」というフレーズが致命的だったこともあるだろうが、ラーメンズの公式な(?)作品集には収録されていない。
小林がこの台詞を挟み込んだのは、子供というのは時としてとんでもなく無知で残酷なことを言う、ということから笑いが生まれるのではないか、という計算からだ。だからこのフレーズに対するオチでも、プロデューサーが「放送できるか!」と怒鳴ったということにしている。