■元旦『朝生』──本当はこういうことを話し合いたかったのに…… (2)
(←承前)
「元の福島」に戻してしまってはいけない
今回の『朝生』、一応討論案としては、
1)福島県民は今……実情、問題点、要望……
2)原発事故と放射能問題
帰宅問題(時期、問題点)、風評被害問題(実態、対策、問題点)、除染問題(汚染実態と現場実情、国・県行政の問題点)、被曝と健康(新基準値、内部被曝と発癌率、これからどうなるか)、廃炉工程と事故収束宣言、補償・賠償問題
3)事故調査・検証委員会中間発表への感想と見解
4)どうする? エネルギー政策
民主党政権の本音とは? 再生エネルギーで代替可能か? 送発電分離のメリット、デメリット、省エネの可能性
5)再び福島県民の声
……となっていた。
本番ではこれの何一つまともに討論できなかったのは、ご覧になっていたかたはお分かりの通り。
このままではあまりにも気持ち悪いので、最低限、言いたかったことだけ、この「討論案」に沿ってまとめてみたい。
●福島から発信する意味
実は、本番前にプロデューサー氏が困った表情で控え室に入ってきた。
番組の飾り付けディスプレイに「フクシマ」とカタカナで書いたことに対して、怒っている人がいるという。
それを聞いてかどうか、本番開始早々、石原洋三郎議員(民主党)が、福島をカタカナで表記するということ自体がすでに偏見の現れだというようなことを言い始めた。
その発言に僕がちょっと切れて「そういう情緒的なレベルの話をしている場合じゃない」というようなことを口走ったら、後でまた「そういう情緒的な話じゃないとか言っている人がいたが……」と、ギャラリーの中から非難された。
僕が言いたかったのは、被害者意識を剥き出しにするだけで、自分たちから何かを冷静に明示していく姿勢がないとしたら、そのことが問題なのだ、ということ。
それと、福島選出の与党議員がここに出てくるなら、党の方針がどうであれ、自分は福島のために戦い、おかしいことにははっきりと異を唱えるくらいの気概を見せてほしい。
ところが、そういう姿勢はまったく見られず、党や政府の既定路線を繰り返し口にしているだけ。姑息にも冒頭からカタカナ表記で云々などと言い出してくる。その程度の気構えなら出てくる意味がない。顔を売りたいだけなのか! そう叱咤したかったわけだ。
しかも、この議員はあらゆる事柄について、極めて基本的な知識さえ持ち合わせていないことがあちこちにうかがえた。
例えば、石原議員は、12月6日に文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(能見善久会長)がまとめた「警戒区域、計画的避難区域などを除く福島県の23市町村を対象に全住民に1人あたり8万円、妊婦と18歳以下の子どもに1人あたり40万円」の賠償金を支払うという方針を、まるで「政府も一生懸命追加支援をしている」と言いたいかのように持ち出していたが、これがどれだけふざけた内容か、福島選出の議員がクレームをつけないとは何事か。(この問題については
⇒こちらを参照)
福島の人たちは、3.11以降、ただでさえ問題をたくさん抱えて疲弊しているのに、政府や県の対応のまずさで、さらに追い打ちをかけるようにぐちゃぐちゃにされている。
そこまで言及できずに、ただ、「大変なんですよ」で終わったら、福島の人を集め、福島から放送している意味がない。
福島の実情を福島の人たちがしっかり伝えるためにわざわざ福島放送の小さなスタジオに集まったのではなかったのか?
それなのに、基本的なことも分かっていない人たちがパネリストとして呼ばれていた。会場から「そんな話は本屋やネットでもっとマシな情報がいくらでも入手できる」という声が上がったのも当然だった。